1月5日16時、稲畑産業(8098)から、「株式の売出し及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ」が発表されたのである。お知らせでは、住友化学とみずほ信託銀行株式会社退職給付信託(みずほ銀行口)、が保有する838万6700株の売出し及び最大125万株のオーバーアロットメントによる売出し(PO)なのである。1月5日の終値で計算すると、金額にして313億円規模、発行済み株式数の17.5%に相当するのである。主幹事は野村證券、引受人はみずほ証券なのである。売出価格等決定日は、1月15日(月)から1月18日(木)までのいずれかの日となっているのである。
このPOの実施理由について、稲畑産業は、「市場においても政策保有株式見直しの動きが進む中、住友化学株式会社より当社株式の売却意向を確認したことから、上記株式の売出しにより、売出人に対し当社株式の円滑な売却機会を提供することといたしました。個人投資家層を中心に当社株式への投資機会を増大し、株主層を拡大させることで当社株式の市場流通性を向上させ、株主構成の再構築を図ることを当該売出しの目的としております。」と説明しているのである。このPOの背景に、住友化学は、今期も営業赤字となる見込みで二期連続の赤字となるなど厳しい事業環境にあることから、政策保有株式を7割削減し500億円のキャッシュを創出する方針があるのである。なお、売出人である住友化学株式会社との事業面での連携関係については、PO後も継続する予定なのである。
このPOは、利益の希薄化は起こらないが、安定株主であった住友化学とみずほ信託銀行株式会社退職給付信託(みずほ銀行口)から、発行済株式数の17.5%が売り出されるということで、株式市場に出回る株式数が増え、必然的に株価の下落が予想されるのである。1月5日の株価(終値)は3,255円、16時にPOが公表された後のPTS市場では、予想どおり3,000円台に下落しているのである。何故に、このタイミングでPOかと推測すると、やはり新NISAがスタートしたところであり、多くの個人株主が株式市場に参加することが期待されるタイミングであることが大きいのである。また、多くの個人投資家が好む株主優待を以下のとおり実施しおり、1月15日の終値ベースで2024年3月期の予想配当利回り3.69%と高配当とは言いがたいがまずまずの配当利回りということも理由なのかもしれないのである。